11.23.02:16
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02.04.21:52
ヤドリギと驚きと……初キッス
それは、昼間の休み時間のことだった。
いつも、一人で飯を食っている俺のところに、あいつがやってきた。
今日の18時、学園が用意したヤドリギの下で待っている…と。
その言葉に、俺は首を傾げていた。
カレンダーを長め、今日が12月25日だという事を思い出すと、あいつの言葉の意味を理解する。
「………クリスマス、か。」
元々、無教徒だった実家でクリスマスを祝ったことなどなかった。
せいぜい、雪の中で訓練をつんでいるぐらいだったが……、確かこの日に贈り物をする習慣があったか。
「……………。」
ふと、目にしたのはツヴァイの形見。
バスターライフルが壊れてしまい、コアだけは何とか取り出せたものの…修理することも出来ず。
このコアを、そのまま腐らせているよりかは――――――。
約束の時間。
一足先に、オレはヤドリギの下であいつを待っていた。
それっぽく、コアで作ってもらったリブレスレットを紙袋に入れて、赤いリボンまでつけて。
「ごめん、アイン!……待たせちゃった?」
なにをやっているんだと、冷静な頭の中で自分を責めていると、あいつが駆け寄ってくる。
どこか、買い物に行ってきたんだろうか、見たことのないマフラーを巻いていた。
まあ、あいつのことだし、大体想像は付く。
「……いや、いい。時間はたっぷりあるんだ。」
そう、時間はたっぷりある。
いくら冬場とはいえ、一日はまだまだ残っている。
焦る必要など、どこにもなかった。
「…メリー、クリスマスだ。…気に入ってくれるかどうか分からんが……。」
そういって、オレはブレスレットの入った紙袋を、あいつに差し出した。
若干、サプライズ的なもので用意をしたが…喜んでくれるだろうか。
「これ……もしかして、私に?」
あいつの、驚いた表情から紡がれる言葉に、オレは頷き一つで返す。
「………ありがとう、アイン。」
あいつの微笑みに、オレはかぁっと頬が熱くなる。
………いかん、この顔を見ているとあいつを直視できなくなる。
早々に、この場を退散したほうがよさそうだ…。
「あ、待ってアイン。」
後ろに引っ張られる感覚。
ジャケットの裾を取られ、俺はあいつのほうに振り返った。
「………これ、私からのお返し。」
そう言って、あいつはオレに身体を寄せた。
首に手を回し、オレに体を密着させて……。
あいつの細い身体を支えるために腰に腕を回すと、ふっと力を入れるだけで折れてしまいそうだ。
「…………っ!?」
あいつの顔が、急に近くなった。
口と口が重なり合い、今まで感じたこともないような感情が湧き上がって来る。
鼓動が、自然と激しくなり、思考が定まらない。
「……メリー、クリスマス。」
呟くあいつの体重を、体全体で感じる。
思考が定まらず、身体を動かすことすら出来ない。
「……ねえ、アイン?この後…まだ時間あるかな?」
離れていく体温。
真っ赤になったあいつの言葉に、ようやくオレは現実に戻ってきた。
「………あ、ああ…かまわん。時間は……。」
いくらでも、あるのだから。
何とか紡ぎだした言葉。
あいつに手を伸ばし……いまだに高鳴る鼓動を聞きながら。
しかし………、オレはこのとき強く思った。
こいつだけは……失いたくない、と。
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